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LINER NOTES ライナノーツ
A-TRAK SUNGLASSES IS A MUST
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A-TRAK "SUNGLASSES IS A MUST" ライナーノーツ
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バトル引退後はソロで世界中のDJツアーを行うようになったAトラックだが、彼はいつでもイノヴェイティヴなルーティーンを披露していた。2002年に彼がDMCジャパン・ファイナルで来日した際に披露したルーティーンでは、ミッシー・エリオットやジェイZなど、メインストリームのレコードを巧みにルーティーンに導入し、ヒップホップの幅広い知識を駆使したセットが印象的だった。そんな彼が2004年のツアーでロンドンを訪れた際、レコード店でインストア・ライヴを行ったときにカニエ・ウェストと運命的な出会いを果たした。カニエ・ウェストは彼のDJセットに衝撃を受け、AトラックをすぐにツアーDJとして起用する。Aトラックはカニエ・ウェストと共にスタジアムでコンサートを行うようになったが、その中でも彼はターンテーブリストとしてのルーツを忘れていなかった。「カニエとライヴをやることで、クラウドにターンテーブリズムのことを教えようとしてるんだ。一般のクラウドのためにパフォーマンスを多少変えるけど、もっとキャッチーなものになるように音楽的なルーティーンを作るようにしてるんだ」その後、Aトラックはコモンのアルバム『Be!』、そしてカニエのセカンド『Late Registration』でもスクラッチでフィーチャーされた。「夢が叶ったような想いだったね。一般のリスナーが聴くようなメジャー・レーベルのラップ・アルバムでずっとスクラッチしてみたいと思ってたんだ。それに、僕はずっと昔から二人のファンだったから嬉しかったね。コモンのアルバムでミスター・シニスタのスクラッチを聴いてたのをよく覚えてるよ。サンプルのクリアランス問題もあったから、たくさんのレコードを使うことはできなかったんだよ。カニエはどんなスクラッチをやって欲しいか教えてくれて、その後は僕はエンジニアと二人っきりでレコーディングしたんだ。ファンキーでキャッチーでありながら、スキルのあるスクラッチを披露したかったんだよ」DJバトルというコアでアンダーグラウンドな世界から出てきたAトラックが、カニエ・ウェストというメジャーなアーティストに起用され、MTVなどに出演するようになったのは多くの若きDJに希望を与えたに違いない。「MTVのアワード・ショーにカニエとジェイミー・フォックスと出演できたのはクレイジーな状況だったね。子供の頃からああいうアワード・ショーを見てたし、友達がみんな間違いなく見てるのは知ってたからな。信じられなかったよ。今後もカニエのDJをやるし、グラミー賞の後に世界ツアーが始まるんだ。でも2006年はソロ活動の計画はたくさんあるし、ソロ・アルバムをリリースしたりツアーするよ」

Aトラックが来日したときに僕は何度か通訳としてアテンドしたことがあるが、彼は当時から常にビデオカメラを回していた。そのときの映像 がまさかこのDVDで使われるとは思わなかったが、彼は当時から このDVDのビジョンを持っていたに違いない。「DVDを制作 した主な理由は、僕のキャリアのストーリーを伝えるためだよ。僕の個 人的な視点から語ることで、新人のアーティストが共感できる内容にし たかったんだ。例えば僕が97年DMCで優勝したこととか、特定 のイベントしか知らない人がいるから、それ以後僕がやってきたことを 教えたかったんだ」とAトラックは言う。このDVDを見れ ば、Aトラックのこれまでの歴史、有名アーティストやDJ とのセッション、カニエ・ウェストのツアーの貴重な映像も見ることが できるから嬉しい。また、このDVDの音楽をAトラック自身 が制作しているが、2006年に彼のファースト・ソロ・アルバムがリ リースされるらしい。「アルバムのリリースは今年の終わりになるよ。 まだタイトルは決まってないんだ。コンセプトは、スクラッチ系の作品 にありがちなアブストラクトで実験的なサウンドではないスクラッチ作品を作ることなんだ。兄貴のデイヴがプロダクションを手伝ってくれて るよ。大半の曲はスクラッチ主体の曲なんだ。ゲストは全部教えられな いけど、リトル・ブラザーや(カニエ・ウェストのレーベル)GOODミュージック・ファミリーのアーティストも参加するよ。ゲストが 参加する曲は、アルバムの半分だけなんだ。残りはインストになるよ」

カニエ・ウェストのライヴでAトラックはアグレッシヴにスク ラッチやジャグリングを導入し必要不可欠な役割を担っているが、ソロ DJとしてのパフォーマンスも進化している。「今はルーティーンをDJセットに組み込んでるんだ。最近はもっと選曲とライヴ・リミックスを重視してるんだ。ヒップホップ、クランク、オールドスクール・エレ クトロ、ダンスホール、80年代ファンクとか何でもミックスしてるよ。ループステーションのペダルを使ってその場で曲を作ったりもするし、ラップトップでSerato Scratchのシステムを使ってる」カニエ・ウェストのライヴだけではなく、彼の進化しDJセットを是非日本で見たいものだが、2006年の予定はびっしり埋まっているそうだ。「ラッパーのGLCと一緒に"Drive Slow" というミックステープをリリースするし、"Oh No You Didn't"というライヴ・ミックスCDをリリースするよ。アルバムはまだ制作中だし、ライヴ・セットを発展させてる最中だよ。今年はまだ何ヶ月間もカニエとのツアーが残ってるしね・・・」

まだ23歳のAトラックだが、彼の進化からは今後も目が離せない

2005年2月 バルーチャ・ハシム

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